医療費の適正化による歳出削減の可能性

社会保険料の1%引き下げに伴う年間2~3兆円の減収を補うためには、医療費の適正化が重要な課題です。高齢化が進む中、医療費は増加傾向にあり、財政を圧迫しています。本記事では、医療費の適正化に向けた方策を整理し、期待される削減額について検討します。


1. 日本の医療費の現状

(1) 医療費の規模

  • 日本の年間医療費総額は 約44兆円(2022年度)
    そのうち、公的支出(税金や社会保険料)が約70%を占めます。

(2) 高齢化の影響

  • 75歳以上の高齢者が占める医療費は全体の約50%。
  • 1人あたりの医療費は75歳未満の約4倍。

(3) 課題

  • 過剰医療:不必要な検査や治療、過剰な処方。
  • 患者負担率の低さ:特に高齢者医療での自己負担割合が低く、医療費の抑制意識が薄い。

2. 医療費適正化の方策と期待される削減額

(1) ジェネリック医薬品の普及

  • 現状:日本のジェネリック医薬品使用率は約80%。
  • 方策:100%近くまで普及率を引き上げる。
  • 削減額:年間約3000億~5000億円。

(2) 高齢者の自己負担割合の引き上げ

  • 現状:75歳以上の高齢者は医療費の自己負担割合が1割(一定以上所得者は2割)。
  • 方策:全高齢者の負担割合を2~3割に引き上げる。
  • 削減額:年間約1兆5000億円~2兆円。

(3) かかりつけ医制度の強化

  • 現状:患者が自由に専門医を受診可能で、医療費が高騰する傾向がある。
  • 方策:かかりつけ医を通じた受診の適正化を推進。
  • 削減額:年間約5000億~7000億円。

(4) 予防医療の推進

  • 現状:生活習慣病や肥満、糖尿病などが医療費増加の要因。
  • 方策:健康診断や生活習慣改善の促進、インセンティブ制度導入。
  • 削減額:年間約3000億~5000億円。

(5) 不必要な受診の抑制

  • 現状:軽度な風邪や花粉症などでの過剰受診が多い。
  • 方策:軽度症状では薬局で対応可能な仕組みを拡充。
  • 削減額:年間約2000億円。

(6) 医療デジタル化の推進

  • 現状:紙ベースの診療記録や非効率な業務がコストを増加させている。
  • 方策:電子カルテの普及、オンライン診療の活用促進。
  • 削減額:年間約1000億~2000億円。

3. 全体の削減額の試算

上記の方策を組み合わせた場合の削減効果を試算します:

方策削減額(年間)
ジェネリック医薬品の普及3000億~5000億円
高齢者自己負担割合の引き上げ1兆5000億~2兆円
かかりつけ医制度の強化5000億~7000億円
予防医療の推進3000億~5000億円
不必要な受診の抑制2000億円
医療デジタル化の推進1000億~2000億円
合計3兆9000億~5兆円

4. 医療費適正化に向けた課題と対策

(1) 制度変更への抵抗

  • 高齢者負担増などは社会的反発が予想される。
    対策:低所得高齢者向けの補助制度を同時に整備する。

(2) 医療現場の負担

  • デジタル化や効率化に伴う現場負担の増加。
    対策:十分な研修や支援制度を用意。

(3) 国民の意識改革

  • 不必要な受診の抑制には国民の意識改革が必須。
    対策:啓発活動やインセンティブ制度を活用。

5. 結論:医療費削減の鍵は適正化にあり

医療費の適正化は、財政健全化の重要な一歩です。具体的な方策を実施すれば、社会保険料1%引き下げに必要な2~3兆円の財源を十分に確保できる可能性があります。

一方で、医療費削減には短期的な効果だけでなく、国民の健康改善や医療サービスの質の維持という長期的視点も欠かせません。効率性と公正さを両立させた政策設計が求められます。

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