1. 背景:高齢者の所得と資産格差
現在の日本では、高齢者の多くが「低所得」とみなされる一方で、金融資産の大部分を65歳以上が保有しているという事実があります。総務省の統計によれば、家計全体の金融資産のうち 約7割 を65歳以上が保有しており、その中には数千万円以上の資産を持つ世帯も少なくありません。
一方で、現行の社会保険料負担は主に所得に基づいて計算されており、資産を多く持つ高齢者が社会保険料負担を免れる構造となっています。このような不公平を解消するために、「所得+資産」に基づく負担方式への転換が必要です。
2. 現行制度の課題
(1) 所得のみを基準にした保険料負担の限界
- 現行の保険料計算は年金などの所得に基づいており、資産の保有状況は反映されていません。その結果、資産が多い高齢者と少ない高齢者の間で負担格差が生じています。
- 例:年間100万円の年金収入しかない高齢者が、数千万円の金融資産を保有していても負担額は同じ。
(2) 若年層への過剰な負担
- 高齢者の保険料負担が少ないため、その分の財源を現役世代が支える構造となっています。結果として、現役世代の可処分所得が減少し、消費や将来の資産形成が阻害されています。
(3) 資産と所得の不均衡
- 高齢者の金融資産保有率が高い一方で、所得水準は低いというアンバランスが制度に反映されていません。これが制度の公平性を欠く一因となっています。
3. 高齢者の保険料負担改革:資産を考慮した負担方式の提案
(1) 資産を考慮する理由
- 高齢者が持つ金融資産や不動産資産は、生活を支える重要なリソースであり、それを負担能力の一部として活用することで公平性を向上できます。
(2) 提案:所得+資産に基づく負担方式
- 基準となる資産の定義
- 対象とする資産:現預金、不動産(自宅を除く)、投資商品など。
- 一定額(例:500万円)を基準として、それを超える分に課税。
- 資産課税の仕組み
- 年金所得やその他の所得に加えて、資産の一定割合(例:1%)を保険料計算に含める。
- 例:現預金2000万円を持つ高齢者の場合、課税対象は1500万円(2000万円-500万円)で、年間負担額は15万円(1%の場合)。
- 柔軟な控除制度
- 資産の中で生活に必要な分は控除対象とし、課税負担を軽減。
- 例:医療費や介護費用などを控除可能とする。
4. 他国の事例:資産に基づく負担モデル
(1) スイス
スイスでは、個人の所得だけでなく、資産に基づく課税が行われています。金融資産や不動産を評価し、その総額に応じて税負担が決定されるため、富裕層がより多く負担する仕組みが整っています。
(2) ドイツ
ドイツでは、高齢者向けの社会保険料負担も所得と資産の双方を考慮する方式を導入。これにより、富裕層が公平な負担をすることで、全体の制度維持が図られています。
5. 資産を基にした負担改革のメリット
(1) 制度の公平性の向上
- 資産を考慮することで、資産を多く保有する高齢者が適切な負担を負い、現役世代への負担が軽減されます。
(2) 財源の確保
- 資産課税を導入することで、追加的な財源を確保でき、社会保障制度の持続可能性が向上します。
(3) 負担の再分配
- 富裕層から多くの負担を求めることで、所得や資産の再分配効果を高めることが可能です。
6. 想定される課題と対応策
(1) 資産評価の方法
- 問題:資産の正確な評価方法が難しい。
- 解決策:簡易評価方式を採用し、税務当局が定期的に監査を行う。
(2) 高齢者の反発
- 問題:資産課税に対する心理的抵抗感が強い。
- 解決策:課税開始額を高めに設定(例:5000万円以上)し、多くの高齢者には影響を与えないよう配慮。
(3) 資産の海外逃避
- 問題:富裕層が資産を海外に移転する可能性。
- 解決策:国外資産を含めた課税ルールを整備し、資産隠匿を防ぐ。
7. 結論:公平な社会保険制度への第一歩
日本の高齢者が保有する膨大な資産を考慮しないまま、現役世代に過度な負担を求め続けることは、制度の不公平感を助長します。「所得+資産」に基づく負担方式への転換は、制度の持続可能性を確保し、世代間の公平性を実現する重要なステップです。以下の提言を実行することで、より公平で安定した社会保障制度を築くことができるでしょう:
- 資産に基づく保険料負担方式の導入。
- 資産課税における控除制度の拡充。
- 富裕層への適正な負担を求める制度設計。
現役世代と高齢者世代の負担バランスを見直し、将来世代に負担を先送りしない社会保障改革を進める必要があります。