「厚生年金の事業主負担は労働者の負担である」:たかまつなな氏の誤解に反論する


1. たかまつなな氏の主張とは?

たかまつなな氏(審議会委員)は、厚生年金の保険料について、「事業主負担分があるため、労働者にとってお得」という趣旨の主張をしています。この発言は一見すると正当性があるように思えますが、経済学的視点や労働市場の実態を考えると、大きな誤解が含まれています。


2. 事業主負担分は本当に「会社の負担」なのか?

(1) 事業主負担は、労働者の「総報酬」の一部

経済学的には、厚生年金の事業主負担分も労働者の「総報酬(賃金+福利厚生)」に含まれると考えられています。つまり、以下のようなメカニズムが働いています:

  • 労働者が受け取る賃金=総報酬 − 事業主負担分 − 労働者負担分
  • 企業は、総報酬の枠内で人件費をコントロールしており、事業主負担が増えれば労働者の賃金が抑制される可能性が高い。
(2) 企業にとっての「人件費」とは?

企業は、以下をすべて「人件費」として計算しています:

  • 基本給
  • 賞与
  • 福利厚生費用
  • 厚生年金や健康保険の事業主負担分

そのため、厚生年金の事業主負担分は、実質的には労働者の潜在的な賃金から差し引かれていると見るべきです。


3. 労働者の負担と見なす理由

(1) 労働市場の需給関係が賃金に反映される

労働市場では、企業が支払う総人件費の額は、労働の需給関係によって決まります。その中で、厚生年金の事業主負担分が増えれば、以下のような影響が出る可能性があります:

  • 労働者が受け取る基本給が抑制される。
  • 昇給や賞与の減少につながる。
  • パートタイムや非正規雇用が増加する。
(2) 国際的な研究も「労働者負担」を支持

経済学者や国際機関(OECDやIMFなど)の研究では、社会保険料の事業主負担分の大半が労働者の賃金減少として転嫁されることが示されています。これは、税負担がどのように分配されるかを分析する「税の帰着」に関する基本理論です。


4. 「お得」ではない現実

(1) 実際の厚生年金保険料負担

現在、厚生年金の保険料率は**18.3%(労使折半で9.15%ずつ)**です。このうち、事業主負担分が労働者の賃金に影響を与えているとすれば、以下のような計算が成り立ちます:

  • 年収500万円の場合:
    • 労働者負担分:約45万7,500円
    • 事業主負担分:約45万7,500円
    • 総人件費への影響:約91万5,000円
(2) 実質的に労働者が全額負担している現実

仮に事業主負担がなくなれば、その分が賃金に上乗せされる可能性があります。つまり、労働者が「事業主負担分も支払っている」と認識すべきです。


5. たかまつなな氏の主張への反論

(1) 「お得感」は錯覚である

たかまつ氏の「事業主負担があるからお得」という主張は、企業の人件費全体を考慮しないミスリーディングな説明です。実際には、事業主負担分も労働者の労働価値から引き出されているため、「労働者の負担」として捉えるべきです。

(2) 正確な情報提供が必要

年金制度を正確に理解するには、経済学的な視点を交えた議論が欠かせません。特に、事業主負担分が労働者に与える影響を正しく伝えることが重要です。


6. 提言:透明性のある議論を目指して

(1) 労働者に正しい情報を提供

厚生年金の保険料負担構造について、労働者が「見えない負担」を認識できるよう、政府やメディアは透明性のある情報提供を行うべきです。

(2) 改革の必要性

年金制度を持続可能にするには、現役世代と高齢世代の負担の見直しが不可欠です。そのためには、賃金や人件費全体に与える影響も考慮した制度設計が必要です。


7. 結論

「厚生年金の事業主負担は労働者の負担である」という認識は、経済学的な視点から見ても妥当です。たかまつなな氏のような発言が誤解を広めることで、現役世代の負担感を軽視する結果になりかねません。

透明性のある議論と、正しい理解を広めることが、持続可能な社会保障制度の第一歩です。

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