1. 世代間の負担と給付の不均衡
厚生年金保険は、現役世代が納めた保険料を高齢者世代に給付する「世代間扶養」の仕組みです。この制度では、少子高齢化の進行に伴い、以下の問題が顕在化しています:
- 高齢者世代の高い給付水準
過去の高い経済成長期に加入していた高齢者世代は、保険料負担が相対的に軽かった一方で、高い給付を受け取っています。- 平均的な高齢者世代は、生涯に支払った保険料の約2~3倍の年金を受け取ると推計されています。
- 現役世代の負担増加
少子化により被保険者が減少している中、1人の高齢者を支える現役世代の負担が増加しています。- 現役世代は、生涯に支払う保険料が給付額を上回る「払い損」になる可能性が高いです。
2. 高齢者世代と現役世代の収支比較
(1) 高齢者世代(1940~1950年代生まれ)
- 保険料負担:月給30万円の場合、現役時代の保険料は年間約36万円(1980年代のデータ)。
- 給付額:年金受給額は、夫婦で月22万円程度が標準。20年間受給すれば約5280万円。
- 差額:支払った保険料の3倍近い給付を受ける計算。
(2) 現役世代(1990~2000年代生まれ)
- 保険料負担:月給30万円の場合、年間約63万円(2020年代のデータ)。
- 給付額:将来受け取れる年金額は、月14~16万円程度と推計。20年間受給すると約3840万円。
- 差額:支払った保険料よりも給付額が少ない、払い損の状態。
3. 負担増の現状:月給60.5万円以上の厚生年金保険料の引き上げ
厚生労働省社会保障審議会年金部会では、月給60.5万円以上の高所得者層に対し、厚生年金保険料の負担を増加させる方針が示されました。これは以下の説明を伴っています:
- 「負担が増えれば、将来の給付も増える」
しかし、この主張には問題点があります。年金制度が世代間扶養の仕組みである以上、将来の給付額は人口動態や経済状況に依存します。少子高齢化が進む現状では、期待される給付が現実に達する保証はありません。
4. 問題点:現役世代の「払い損」を助長する構造
(1) 保険料の上昇と所得の減少
現役世代の手取り所得は、社会保険料の負担増により年々減少しています。特に高所得者層に対する負担増は、以下のような影響を及ぼします:
- 可処分所得の減少
年収720万円を超える部分に対する保険料率が18.3%(労使折半)となり、収入の実質的な減少が進行。 - 消費活動の抑制
高額所得者層が負担増で消費を抑えると、経済全体の成長にも悪影響を及ぼします。
(2) 将来の年金受給額の不透明さ
現役世代が受け取る予定の年金額は、以下の理由で不確実性が高まっています:
- 日本の財政悪化に伴う年金給付水準の引き下げ。
- 資産運用リスクによる年金積立金の減少可能性。
5. 解決策:世代間の公平性を確保するために
(1) 年金給付の所得連動制の導入
資産や所得に応じて給付額を調整する仕組みを導入することで、高所得高齢者への過剰な給付を抑制します。
(2) 保険料負担の再設計
現役世代の過重な負担を軽減するため、以下を検討すべきです:
- 資産を持つ高齢者層への特別拠出金導入。
- 現役世代の保険料を引き下げ、高齢者層の保険料負担を引き上げる。
(3) 賦課方式から積立方式への移行
現行の世代間扶養型制度から、個人ごとに積み立てる方式に移行することで、払い損のリスクを軽減します。
6. 結論:現役世代が損をしない制度改革を目指して
現行の厚生年金制度は、高齢者世代に有利な構造が固定化されています。このままでは、現役世代が「払い損」となり、世代間の不公平感が深刻化する一方です。改革には以下の視点が不可欠です:
- 世代間の公平性を担保する仕組みの構築
高齢者にも適正な負担を求めることで、現役世代の負担を軽減する。 - 将来にわたる年金制度の持続可能性の確保
積立方式の導入や、給付額の見直しを行い、制度の安定性を高める。 - 社会全体での負担の分配
高齢者の資産や消費に基づく新たな財源確保策を導入する。
このままでは現役世代のモチベーションが低下し、経済成長も停滞してしまいます。政治家と有権者が協力して、公平かつ持続可能な年金制度を実現する必要があります。