社会保険料の労働者負担は30%である:見えない負担を直視しよう


1. 社会保険料の現状:表面的な労使折半の仕組み

日本の社会保険料制度では、一般的に「労使折半」とされ、企業が事業主として半分、労働者が給与から半分を負担する仕組みとなっています。しかし、この「事業主負担分」が本当に企業側だけの負担で済んでいるのかについては、十分に議論されていません。


2. 実質的な負担:労働者が負担する30%

(1) 総人件費の概念

企業は、労働者を雇用する際、給与(現金賃金)だけでなく、社会保険料の事業主負担分や労働保険料も含めた**「総人件費」**を基準にコスト計算を行っています。このため、事業主負担分は、労働者の「見えない負担」として総報酬の一部に組み込まれています。

(2) 実際の負担率の計算

2024年時点で、厚生年金保険料は18.3%(労使折半で労働者と事業主がそれぞれ9.15%)であり、健康保険料や介護保険料を加えると、労働者が直接負担しているのは約15%程度とされます。しかし、事業主負担分を含めると、実質負担率は30%近くに達します。


3. 事業主負担分は労働者の賃金に影響する

(1) 給与に転嫁される仕組み

経済学の基本理論である**税の帰着理論(Tax Incidence)**によれば、社会保険料や税金は市場の需給関係によって労働者に転嫁されるとされています。特に労働市場が硬直的である場合、事業主負担分の多くが労働者の給与や昇給の抑制として現れる可能性が高いです。

(2) 労働者に見えない形で削減される給与

企業が社会保険料の事業主負担分を「負担」として考える限り、そのコスト分がなければ、労働者の給与が上がる余地があると言えます。逆に、保険料率が上昇すると、企業がその分の負担を賃金抑制という形で転嫁する可能性が高まります。


4. 労働者の認識不足:問題の根源

(1) 「労使折半」という言葉の錯覚

多くの労働者は、「事業主負担分があるから、自分の負担は半分だけ」と考えがちですが、これは誤解です。事業主負担分も労働者が生み出す労働成果の一部であり、実質的には「労働者が稼いだ分」から支払われています。

(2) 年金定期便の誤解を招く表記

「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」では、これまでの納付額に事業主負担分が合算されていません。このため、労働者は自分が納めた総額を過小評価しがちです。


5. 社会保険料の重さがもたらす影響

(1) 家計への負担

労働者が実際に負担している割合が30%に近いことを認識すれば、現行制度が家計にどれだけ重い負担を課しているかが明らかになります。この負担は、可処分所得を大きく減らし、消費意欲の低下や貯蓄増加につながります。

(2) 経済成長への悪影響

社会保険料の負担増は、消費を抑制し、企業の生産活動や投資意欲を削ぐ要因となります。労働者が負担する30%が経済全体にどのような影響を与えているかを理解することが重要です。


6. 改革提案:労働者への透明性を確保するために

(1) 総報酬の明示

労働者が自分の実質的な負担を正確に理解できるよう、給与明細に総報酬額(現金賃金+事業主負担分)を明記することを提案します。

(2) 社会保険料の仕組みを教育

労働者に社会保険料の仕組みを理解してもらうための啓発活動が必要です。例えば、ねんきん定期便に事業主負担分も含めた納付累計額を表示することで、労働者が自分の総負担額を認識できるようにするべきです。

(3) 社会保険料率の引き下げ

社会保険料率を引き下げることで、労働者の負担軽減を図り、可処分所得を増加させる政策を推進する必要があります。この際、制度の持続可能性を担保するために、歳出削減や資産課税の拡大など、バランスの取れた財源確保策が求められます。


7. 結論

社会保険料の「労使折半」という仕組みは、表面的には公平に見えますが、実質的には労働者が大半を負担しています。この現実を直視し、制度設計を見直すことが、労働者の経済的負担を軽減し、経済全体の健全な成長につながります。労働者自身が負担の実態を理解し、改革を求める声を上げることが、持続可能な社会保険制度の実現に必要不可欠です。

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