金融所得課税の強化が悪手である理由

近年、日本政府は財源確保のために「金融所得課税の強化」を議論しています。特に、国民民主党が令和6年12月に提案した 「金融所得を給与所得と合算して累進課税」 あるいは 「税率を一律30%へ引き上げる」 という案が物議を醸しています。

この増税案は「富裕層優遇の是正」として打ち出されていますが、実際には 税収増の効果が限定的で、むしろ経済や投資環境に悪影響をもたらすリスクが大きい のです。本記事では、その理由を詳しく解説していきます。


1. そもそも金融所得課税は本当に必要なのか?

現在、日本の金融所得(株式の売却益や配当、利子など)は 20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%) の税率が適用されています。この税率は欧米諸国と比べても大きく変わらず、日本が「金融所得を優遇しすぎている」というわけではありません。

また、「富裕層が優遇されている」という批判もありますが、そもそも金融所得は誰でも得られるものであり、投資を促進することで経済成長につながる側面があります。むしろ、貯蓄から投資へのシフトを促すべきタイミングで増税することは、 国全体の成長を阻害する可能性 があります。


2. 提案されている金融所得課税の強化案

国民民主党が提案しているのは、以下の案です。

金融所得課税については分離課税を30%に上げ、総合課税と選択できるよう目指します。

→ 「総合課税を選択すると、現在の分離課税の税率20%より低い所得税率の所得階層(例えば10%の平均税率が課せられる所得階層)にとっては減税になりますし、平均税率が30%を超える所得階層は、総合課税に比べて低い税率である分離課税30%を選択するでしょうから、結果として、30%は高所得者層にのみ適用される税率になります。」との説明

金融所得課税が、 投資意欲を低下させ、結果的に市場や経済全体に悪影響を及ぼす リスクが極めて高いのです。


3. 金融所得課税強化の税収効果は限定的

政府が目指すのは、金融所得課税強化による税収増ですが、その効果は限定的です。

例えば、仮に 税率を30%に引き上げた場合でも、年間の税収増は約1兆円程度 と試算されています。一方で、 投資マインドの冷え込みや資金の海外流出により、株式市場の縮小や企業の資金調達コスト上昇 などの悪影響が出ることが予想されます。

さらに、高所得層は税制の変更に敏感なため、以下のような 節税策を講じる可能性 もあります。
法人化して金融所得を事業所得として扱う(法人税の方が低い場合がある)
海外に資産を移動させ、タックスヘイブンを活用する
非課税制度(NISAなど)へのシフト

これらの対策によって、増税の効果が相殺される可能性が高く、結果的に 見込み通りの税収増にはならない でしょう。


4. 金融所得課税強化による悪影響

① 株式市場の停滞と企業の資金調達コスト増

金融所得課税が強化されると、国内投資家の資金が減少し、株式市場が冷え込みます。その結果、 企業が株式を発行して資金を集める際のコストが上昇し、成長投資が鈍化 する可能性があります。

② 高齢者の資産活用が鈍る

現在の高齢者は年金だけでなく、 金融資産の取り崩しによって生活している 人も多くいます。金融所得課税の増税によって、これらの資産活用が阻害され、 老後の生活設計が難しくなる 恐れがあります。

③ ベンチャー・中小企業への資金流入減少

金融所得課税の引き上げは、リスク資産への投資を抑制し、 ベンチャー企業や中小企業への資金流入を妨げる 可能性があります。これにより、新規事業の成長が鈍化し、 日本経済の競争力が低下 するリスクがあります。


5. 代替案としてのアプローチ

金融所得課税強化は、税収増の効果が限定的であり、経済全体への悪影響が大きい政策です。それよりも、 より適切な税制改革や財政改革が先決 ではないでしょうか?

相続税の見直し
→ 高齢者の資産偏在を是正するため、資産1億円以上の相続税を強化するなどの方策が考えられます。

政府支出の見直し(歳出削減)
→ 無駄な行政支出(SDGs関連予算、男女共同参画事業など)の見直しを先行するべき。

投資促進策の拡充
→ NISAやiDeCoの拡充、法人税減税による企業成長の促進。


6. まとめ

政府が進めようとしている 金融所得課税の強化 は、税収増の効果が限定的なうえに、経済や投資環境への悪影響が大きい ため、悪手と言わざるを得ません。

むしろ、 「資産を持つ高齢者への相続税強化」や「政府支出の適正化」 など、他の政策を優先する方が、より公平で持続可能な財政基盤を構築できるはずです。

単なる「富裕層叩き」ではなく、 日本経済の成長を促しつつ、持続可能な税制を構築する方法 を真剣に考えるべきではないでしょうか?


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